「こちらです」

 セリアに案内され辿り着いた先は、思った以上に狭い部屋だった。

 最初に通された部屋よりも狭いのではないだろうか。
 だが、中央に置かれた重厚感漂うテーブルには、細やかな装飾が施された真っ白なテーブルクロスがかけられ、その上には様々な料理がこれでもか、と盛りつけてある。

 ホカホカと温かな湯気を出す料理は作られたばかりらしく、由衣はお腹が鳴りそうになるのを必死に押さえつけた。


「こちらの椅子へどうぞ。奏様もすぐいらっしゃると思いますわ」

「ありがとうございます」

 セリアに指示され、机と同じく重厚感漂う椅子に座る。
 丁度、奏と由衣は対面するようにして座るらしく、由衣はバクバクと鼓動が再び速まるのを感じていた。


「あの、セリアさんは……」

 まさか二人きりにはなるまい。そう思った矢先、セリアが背を向けたので、由衣は焦って口を開いた。

「私はここでは食べませんので。申し訳ないですが、ちょっと行きますわね」

 すぐに戻りますから、と不安げな顔を作る由衣を慰めるように言葉をかけ、セリアは静かに部屋を後にした。

 残された由衣は、マナーって何だっけ? ナプキンって膝にかけるの? 胸にかけるの? と一人思案に暮れていた。