そこに、その噂に彼の人柄は存在しなかった。しかし噂とは葉がついたと同時に根を張るもので、彼は本当の人間を人形にして飾っているから本物の人形はいらなくなった、やら、人形で何か儀式を行って成功したからいらなくなった分を処分しているのだなどといった、根も葉もない噂も流れるようになった。

 さらには彼の外見を見た者はほとんどいないはずなのに、醜く歪んだ老人やら、いつでもシルクハットを手離さない片眼鏡のおじさんやら、挙げ句の果てには鬼のような化け物のような外見だった、なんて噂も流れる始末。


 もはや都市伝説に近いくらいのその噂は、異変から一年を経た今でもまことしやかに囁き続けられている。
 勿論、その噂をする人の度合いが減ったのは確かだが、噂好きのおばさん、中高生の間では格好のネタとして話し続けられているのだ。

 中でも渦中の屋敷の近くにある高校ではどこかで必ず一日一回はその噂が話される。しかし、彼らの大半にとってはただの噂話に過ぎないそれを、彼女は静かに真剣に、そして悲しそうに聞いていた。