桜が散る。

桃色が青い空に舞い、
あたしはそれを見上げ
紺色の膝丈スカートを握りしめた。

にぎやかな場所から離れて、
約束をした人たちを待つ。

隣にいる彼は、
しゃがみこんでアリの行列を見ていた。

コンクリートに点々と続くそれを見て
彼は何を思うのか。

あたしは彼から目を離して、再び空を見上げた。

「先輩たち、遅いね」
「いろいろあんだろ」
「そうだろうけど」
「卒業式の後に来るんだから、
 いろいろあんだろ。
 写真撮ったりとか、卒アルに寄せ書きしたりとか」