少女は俺をマジマジと観察する。 その間、なぜか俺は指先ひとつ動かせなかった。 少女の顔を月の薄明かりが照らす。 小さな顔に瞳だけが大きく、茶色めの髪が真っ直ぐ肩より少し長めのところまで伸びていて白のダッフルコートをきていた。 凜とした、その立ち姿。 鋭い目力。 たぶん、中学生くらい。 突然少女は俺から顔をそむけ、どこかへ走り去ってしまった。 「あっ!おい!」 呆然とする俺に、疑問と冬の寒さだけが残った。