─Quality of love─

空腹が満たされてからも1時間くらい無駄話を続けて、店を出た。

電車に乗って杏奈は二つ目の駅で下車し、おやすみを告げて別れる。

残された俺は、自分がうつる窓の向こうの暗闇を照らす数限りないネオンが通り過ぎていくのを見つめる。

眩しいくらいに輝く偽物の星。
いつのまにか、それは本物を犯してしまうくらいに増殖していた。


窓ガラスに頬をよせてみると、冷たくて溜め息がもれた。


ふいに誰かに肩をたたかれたので振り向くと

そこには中学時代の同級生の凪が気の強そうな顔で微笑みながらたっていた。

「久しぶり」

モデル並のスタイルと派手な顔立ちはあの頃から変わっていない。

凪とは、数ヶ月間付き合っていたことがある。

すぐにお互い別の相手をみつけて、すり抜けていくように別れたけど。


「まーた、ちょっとカッコよくなったんじゃない?あたしの目に狂いはなかったなぁ!」

「よく言うよ。浮気ばっかしてたくせに」

「そりゃあお互い様でしょー!」


中学のことを笑いながら振り返る。
不思議な感じだ。
時間だけが過ぎていく。
凪の笑い顔も、俺も

あの頃から何も変わっていない。