冷たい空気が青い部屋に広がる。


「……どうして?」


俺の言葉が静かに落下した。



莉香の背中は薄くて小さくて触れてしまえば、きっと崩れる。


「潤、約束覚えてる?」

小さな落ち着いた声で莉香は言った。


「ヤクソク…」

俺は確かめるように呟く。

「お互いのことは干渉しないって言ったよね?」

薄暗い部屋に確かな言葉がこぼれて、闇に溶けていくかのように上手く掬えない。


「……今日はもう帰って」


莉香は恐ろしいくらいに落ち着いていて、俺は何も言葉にすることができずに静かに部屋をでた。

その日、莉香は一度も振り返らなかった。