そのとき俺には感覚というものがなかった。 反射的に、なんてよく言うけど実際はそんな言葉すら思いつかない。 一瞬視界がなくなった。 気がつけば莉香の体を柵から抱きおろしていた。 自分でも気がつかないほどの早さで。 その間の記憶はいっさいなかった。 莉香の重みを実感して初めて自分が今、びっくりするくらい息があがって全身ビッショリと嫌な汗が貼りついていことに気付いた。 足の裏も痛い。 床に転がるビー玉をはらいのけずに、走ったから。