和紀が私を、前から抱きしめてくれていた。 そう。 調度廊下にいる男子に見えないように。 「…あんなの、気にすんなよ……」 ………和紀…………。 “ありがとう” の代わりに、和紀の背中に腕を回して、ギューっと抱きしめた。 「時雨っ。苦し……」 ふと、我にかえり力を緩めた。