勇者ゲーム



…ストン


あたしの手に、紙が落ちて来た。


…え…


『勇者、勇者、貴方は勇者。
千鳥 美羽(チドリ ミワ)、君は勇者。』


耳の横ではっきり聞こえる声に、あたしはビクッと肩を震わす。


…あ、呪文。


「私は勇者、貴方を助けに来ました。」


『…あたしを知ってるの?
あたし、死んだのよ?
助けられない、だって貴方は勇者。』


あたしは死んだ?

……いや、あと2回、呪文言わなきゃ。


「私は勇者。貴方を助けに来ました。」


『殺しに来た?
じゃあ死ね。
死んでくれれば、君の大切な男を助けよう。
だって貴方は勇者。』


何が言いたいの?
ヒロさんは…。


「私は勇者。貴方を助けに来ました。」


……………
あれ?
今回は、何にも言わないの?


そう思いながら塩水を手に取った瞬間。


『孝大だな。
お前の愛する男は堺 孝大(サカイ コウタ)!!
殺してやるぅうぅ!!』



先ほどとうってかわって低く唸るような声にあたしは小さな悲鳴をあげる。


…やばい、塩水!!


あたしは急いで塩水を口に含み、ペッと紙に吐いた。


すると、スッとヒロさんの気配が消えた。


…勇者ゲーム、完了。