ギョロリとした魚眼が私を凝視する。

瞬きをしない魚の目。

感情を感じさせない視線で見つめられると鳥肌が立つ。

「女…俺達がサハギンと知っているのならば、ここら一帯が俺達の縄張り(シマ)だってのもわかっているんだろう?」

「知っていながら一人でうろついているとは…」

サハギン達は下卑た笑い声を上げる。

「この間俺達に捕まったエルフの娘は、胎内にしこたま卵を仕込んでやったっけな…胎内から稚魚どもが孵化する様を見て発狂する姿はいい見世物だったぜ」

今度はお前が母胎になる番だと。

悪趣味な魚野郎どもがまとわりつくような視線を投げかけてくる。

しかし。

「あんた達は少し勉強が足りないようね」

口紅を引いた唇を笑みに歪めて。

私は言ってのけてやった。

「只の娘が、あんた達の縄張りをうろつくと思う?」