そんな事を考えていた時だった。

「おやおや、本当に茜ヶ久保マリネじゃないか」

薄笑いを含んだ声が暗闇の中に響いた。

同時に鉄格子の外に立てられていた篝火が灯る。

…その炎に照らされたのは、中年の男だった。

禿頭、脂ぎった顔、分厚い唇。

仕立てのいいスーツを着込んで紳士気取りのつもりかもしれないが、その服の下に隠された、ぼてついた贅肉は隠し切れていなかった。

日頃の運動不足が相当に祟っている様子だ。

「流石は絶世の美女と持て囃される人魚の女王だ。闇に浮かぶ裸身が映えておるぞ」

いやらしく舐め回すような視線で見られ、私は無意識のうちに身をよじる。

こういう男は生理的に受け付けない。

顔がこちらに向けられるだけで、全身に鳥肌が立った。