取り出してみると、サイズは文庫サイズだが、綺麗に製本された本ではなく、小さくて薄い大学ノートのような……

そのノートが出てきた、辞書のページを見てみる。

ぱっと目に入ったのは『紫陽花』という言葉だった。

(『紫陽花』?)

あじさい。

ひっくり返してみても、図書館のものという印(あの数字とか記号とか)はどこにもない。

誰かが忘れていったんだろうか。

中を見ていいものか一瞬躊躇したが、スピーカーからザーッという音が漏れてきた。あと10秒くらいで本鈴が鳴るというサインだ。

ちょっとだけ。放課後すぐ戻せばいい。

そんな軽い気持ちで、少しドキドキしながら、ナツメはそのノートをプリーツスカートの中に仕舞った。