キンコンカンコン ドーン


予鈴が鳴った。

「ふううううーっ」

ナツメは満足げな溜め息を漏らす。

今日は、いじわるな継母に虐待されながらも自分の意志を曲げずに強く生きる娘になりきっていた。

本を読むと、主人公の気持ちになってしまう。

今日のような本は、辛い境遇だけれど、なんだか強くなれたような気持ちになる。
ナツメはそのことに満足していた。

(さてと。読んでしまったから……)

仕舞おうとしてふと本棚に目をやると、誰も手に取らないような古びた辞書に、違和感を感じた。

辞書の中に、ノートがある。