時がたつのは、はやいものだった。僕たちは高校を卒業し、それぞれの人生を踏み出していた。

雅と夏美は大学に進学し、僕はというとバイトから正社員、親父のあとをつぐ形になり、今では料理まで作るようになっていた。

そして一人のお客が言った。

「美術館にならんでる絵にそっくりだね、その飾ってある、しおり」

「これですか、おしながきの隣に貼るのもどうかと思ったんですけど、毎日、見ていたくて」

「大切なものなんだ」

「ええ、とても大切な物なんです。僕の彼女からあずかっているものですから」

「若大勝もすみにおけないな、一度、美術館に行ってみるといいよ」

「はい」