以前とは、何もかもが違っていた。


女を抱いても、何も忘れられなかった。


ただむなしかった。


心が、かわいていった。


俺は、だんだんと女の誘いを断るようになった。


毎日、小瀬からの手紙を繰り返し読んだ。


きれいな字だよな。


読みやすいし。


この手紙に、なんでこんなにひかれるんだろう?


花壇見つけてくれたのが、嬉しかったな。


手紙をくれたのも嬉しかった。


こんな手紙みたいな普通な話し、誰かとしたことあったか?


父、母、兄、姉。


誰ともした事なかったな。


『昨日、風強かったね。
北風だったし、肌寒かったよね。
風邪ひかないように気をつけてね。』


こんな言葉かけてくれるの、小瀬だけだ。


『昨日の練習試合足おかしくした?
なんか左足少しひきずっていた気がします。
痛いなら、病院行った方がいいよ。
心配しすぎかな。』


誰も足を捻挫した事なんて、気づかなかったよ。


心配してくれるのも小瀬だけだよ。


一枚一枚の、手紙のあたかい言葉が、俺の心に降り積もる。