あるとき、花壇の端に白い紙があった。


ゴミ?


手にとってみれば、ノートのきれはし。


『きれいに咲いてますね』


誰かが、この花壇を見つけてくれた。


嬉しかった。


まるで自分を見つけてくれたようで。


だから、返事を書いて、花壇の端に置いた。


『ありがとう』と。


そしたら返事をくれて、それに返事をしてと気づけば文通みたいになっていた。


特別な話をしてるわけでもなく、普通な話をしてるだけ。


ただそれだけなのに、手紙を読むのが楽しみでしかたがなかった。


雨が降ったら、濡れるよな。


他の人に見られる可能性もあるよな。


気がつけば、いつも手紙の事を考えていて、鍵つきの金属の箱をホームセンターで見つけて、花壇に置いた。


名前のない手紙。


相手を知りたくて、朝早く張り込んだ。


来たのは、小瀬 奈津美。


美人で有名な、皆川 きらりの親友。


そのぐらいしか知らない相手だった。


その場で声をかければいい簡単な事なのに、心臓があまりにもドキドキして動けなかった。