中絶させたかった、父と祖母。


命をかけて産みたかった母。


誰が悪いと言う訳もなく、誰にあたる事も出来ず。


ただ、ただ、辛かった。


それから、母が家に戻ると、父も兄も姉も家にいる時間が長くなった。


父も兄も姉も、今まで家に居ない時は、母の別荘にいたのだろう。


俺を残して。


それが別荘から家になっただけ。


そこには俺の居場所なんてなかった。


俺は前よりもテニスにのめり込んだ。


テニスはどんどんうまくなり、全国でも上位に入って行った。


それは俺が逃げ込んだ結果で。


相変わらず、テニスをやって楽しいと感じる事はなかった。


その頃から、なぜか女の人から声をかけられるようになった。


少年愛を好む女性達だった。


どうでもよかった。


どんな形でも、俺を求めてくれるのが嬉しかった。


俺は肉欲に溺れていった。

その時だけは、テニスと同じに忘れられたから。