『なんでそんな事言うの?
子供好きでしょう?』


『あぁ、愛する君との子だよ。
子供は愛しいよ。
でも、君を失ってまでほしいとは思わない。
君がほしいと言うから、二人子供はつくった。
医者と相談して計画的に。
その時も体調とかはもちろん心配したが、医者からも大丈夫だと言われていたし。
でもあの時は違う。
最後は君に負けて産むことは許したが。
集中治療室で意識のない君の手を握りながら、何度中絶させればよかったと思った事か。』


父が母を抱きしめる。


父も母もドアが少しあいていて、そこから俺が見ているなんて気づかない。


『お願いよ。
家に戻して。
無理な事なんてしないから。』


『結局僕は君には逆らえないんだ。』


『じゃあ?』


『あぁ、家に戻っておいで。』


『ありがとう。』


俺は廊下を歩きだした。


どこに向かうわけでもなく、ただひたすら歩いた。


父の気持ち。


母の気持ち。


祖母の気持ち。


頭が心が、揺さぶられた。