「奈津美のバーカ。」


言ってる事はひどいけど。


幸治くんの顔は真っ赤で、口調は優しい。


「奈津美のバカ。
本当にカンベンして。
俺をどこまで翻弄する気なわけ?
俺どこまで奈津美の事好きになればいいの?」


思わず『大好き』なんて言っちゃったけど、幸治くんからもっとすごい事言われてる。


なんで私ごときにそこまでなのかが、まったくわからない。


本気で熱でもあるんじゃないかって、思ってしまう。


私ごときで泣くって?


もしかして幸治くんマニア?


デブ専とか。


うーん、よくわからない。

「奈津美、俺帰るな。」


突然な言葉。


「えっ?」


「もう限界。
俺の理性の持つ間に帰るよ。
我慢が効くうちさ。
狼のマテが効くうちに帰るから。」


幸治くんは少し笑いながら、ドアへと向かう。


「あっ、うん。」


私も慌てて幸治くんの後を追って、階段をおりる。


『我慢』って。


つまり、……うん、そう言う訳だよね。






「帰ります。
おじゃましました。」


リビングにいた、正兄と竜兄にきちんとあいさつをする幸治くん。


ほんとしっかりしてる。