えっ。


泣いてるの?


なんで?


「ちょ、ちょっと幸治くん。」


顔を上げたいのに、押さえられて動けない。


「ごめん。
今動かないで。」


ギュッと力を込めて抱きしめられる。


顔を見られたくないのかな。


私は、言われるままじっとした。








「ありがとう。」


しばらくしてそう言った幸治くんに、ゆっくり体を起こされる。

幸治くんの顔がやっと見れる。


恥ずかしそうに少し俯いてはいるけど、目のふちが少し赤くなっているのがわかった。


「あー、俺格好悪い。」


俯いてた顔を上げて、片手で顔を覆う。


「俺の事もっと好きになって、俺なしで生きられないぐらいにするつもりだったのに。
なんか俺嫌われる事ばっかりだな。」


私、『俺なしで生きられない』だなんて、すごい事言われてるよね。


でも『嫌われる事』って?


「嫌われる事なんて、何もないよ。」


「何もない?」


「うん、何もないよ。
だって私は、大好きだもの。」


一瞬で幸治くんの顔が真っ赤に。


なんかアニメだったら『ボン』って効果音でそうなほど。


「奈津美のバカ。」


ちょっとなに?