起き上がろうとしたら、幸治くんの手が頭の後ろにまわり、顔を胸に押し付けられる。


「ちょっと奈津美、動かないで。
今いろいろマズイから。」


マズイ?


何が?


「奈津美。」


「うん。」


「俺、どんな事言われても仕方ないって思ってたんだ。
奈津美が俺の事嫌いになっても、仕方ないって。
それなのに。」


それなのに?


「はぁー。」


たっ、ため息。


私呆れられた?


「ごめんなさい。」


「うん?
なんであやまるの?」


「だって、幸治くん今ため息。」


「あぁ、違うよ。
ため息じゃなくて、深呼吸。
いろいろマズイから落ち着こうとしてるだけ。」


言ってる事がわからない。


答合わせしたい。


「幸治くん。
よくわからないよ。
答合わせして?」


頭を押さえられて顔が見えないし。


笑ってる?


怒ってる?


どんな気持ちで言ってるの?


「答合わせねぇ。
そうだなー。
俺、奈津美でいっぱいなんだ。
それなのに『ヤキモチ』なんて可愛い事言って。
もう奈津美があふれそうなんだ。」


えーと、私があふれるんだ。


なんかさらにわからなくなったかも。