えーと、抱き着いて小声だよね。


って、私から抱き着くの?


正兄のバカー。


なんてレベルの高い事言うんだ。


「奈津美、言って。」


黙っていた私に、幸治くんが声をかけてくれる。


よっ、よし。


行くぞ。


私は幸治くんに抱き着いた。





……つもりだった。





いきよいがよすぎて、幸治くんを倒してしまった。


えっ、これって、私が床に押し倒したって事?


「奈津美どうしたの?」


どうしたんでしょうか、ははは……。


とにかく、次は小声で言いたい事を言わなきゃ。


「あのね、うまくいえないんだけどね。」


「なんでも聞くよ。」


真剣な幸治くんの顔。


よし、小さい声、小さい声。


「私と付き合う前の事だし。」


「うん。」


「ちゃんと幸治くんは話してくれてるし。」


「うん。」


やっぱりうまく言えない。


結局私が思ってる事って






「……ヤキモチやいたの。」











あれ?


幸治くんの返事がない。


小さな声すぎて、聞こえなかった?