「ほら、サクサク話せ。」


「えーと、例えばね。」


「あー、めんどくせー。
何が『例えば』だ。
そんなん清水に決まってんだろう。
清水がどうしたんだ?」


そっそんなに私わかりやすいの?


「早く。
うそついてもバレっかんな。
思ったまま話せ。」


「あのね、幸治くん今まで彼女いなくて、私が初めての彼女なんだって。
でもね、モテるから女の人から誘われて、なんて言うか……、経験してるみたいなの。」


…………あれ?


正兄何も言わない?


「正兄?」


「なんだ?」


「何か言う事ない?」


「はぁ?
何も言う事ないけど。
それでなんだよ?
これからも誘われたら行くって?」


「ううん、私だけだって言ってくれた。」


「それで?」


「えっ、終わりだけど。」


正兄、何その怖い顔。


妹に向ける顔じゃありませんよ。


「今のどこに奈津美がひっかかってんだ?」


「うーんと、それがわかんないの?」


「あぁ?」


ひぃ、怖い。


「正兄、怖いって。」


竜兄が、コーヒーとホットミルクを入れたお盆を持って来る。


「奈津美は清水くんが、経験してるのが、いやなのか?」