「聞かれてたのに、なかなか言わなくてごめん。
聞いて来る奈津美が可愛くて、答えなかったんだ。



静かに話し出す幸治くん。

「結構すぐに奈津美の事わかったよ。
だって手紙の相手気になるだろ。
だから朝早く行って、少し遠くから隠れて見てたんだ。
でもさ、なんて声かけていいかわかんなくて。

『あなたに会いたい。
会って話がしたい。』

って手紙書いたんだ。
そしたら、それっきりだろ、あせったあせった。」


知ってたの?


私だって、あの時もう知ってたの。


「うそでしょう?」


「俺、奈津美にうそなんかつかない。」


真剣な目。


うそついてる目じゃない。

「だって、だってクラスで『すてきな人』って言ってたじゃない。」


「えっ、クラスで?
あ、えーと。
言われてみれば、手紙書いてるの見られてそんな事いったような。」


「だから私手紙だせなくて。
すてきな人って思われてたら、私って言えなくなって。
私、私……。」


言葉が続かない。


「うーんと、答合わせしよう。
俺にすてきな人だと思われて、プレッシャー感じてたって事かな?」


「だって私の事知ってたなんて思わなくて。」