「あっ、私ったら何にもだしてないね。
さっきのコーヒーも飲めなかったよね。
何か飲み物持って来るから。
温かい物がいいかな?
竜兄のいれるコーヒー美味しいって正兄が言ってるから。
わっ、私コーヒーあんまり好きじゃなくて美味しいかどうかわからないけど、美味しいと思うから、竜兄にまたコーヒーいれてもらおうね。
ちょっと待ってて。」


一気にしゃべりドアへ向かう。


ここに居たくない。


「なっ奈津美。」


ドアに手をかけたら、立ち上がった幸治くんに後から抱きとめられる。


「行くな。
怒っても、ひいてもいいから、行くな。
思ってる事俺にぶつけてくれ。」


力強く抱きしめられる。


「頼むから、行かないでくれ。」


つぶやいた小さな声に、必死なのが伝わる。


「奈津美の好きなようにしていいから。
俺の事殴ってもいいから、行かないでくれ。
俺から離れないで。
俺には奈津美だけだから。」


さらに力が加わる。


くっ苦しい。


「わかったから、ちょっと苦しい。」


「あっ、ごっごめん。」


離してくれたけど、すぐに手をつながれた。