「昔から好きな曲だから」
雄大が困っている間に、私は答えた。
「物心ついた時から、この曲よく流れてて、いつか自分も弾けるようになるんだって思って、小さい頃から練習してたの。
そしたら、いつの間にか、練習曲のように、何かを弾く前に、必ずこの曲弾くようになって、いつの間にか一番弾ける曲になったの」
「一番弾ける曲・・・」
「私元々、ピアノ専攻じゃないから、そこまでピアノも得意じゃないし」
「あっ、そういえば、そんなことも言ってたな。
てか、専門?麗菜の専門って何?」
「バイオリン」
「えっ!?バイオリン??」
「そんなに驚くこと?」
「だって、バイオリン持っているところ見たことないから」
「それは、バイトに持ってきたら邪魔になるから、いつも置いてきてる」
「大学から、直接バイト先に来ることねぇの?」
「今のところ、いつも家から来てるね」
「へぇ〜」
「何?」
「いや、あんま想像できないからさ。
麗菜がバイオリン弾いてるところ」
「あっ、見せないよ!見たかったら、お金払ってよ」
冗談で言うと、雄大も笑いながら言った。
「誰も頼んでねぇーよ!」
私たちは、こうやって冗談言い合いながら、ロッカールームに向かった。
雄大は、喋りやすくて、面白い人。
気づいたら、冗談も言い合える仲になっていた。
だけど、ただそれだけだった。
