最後のお客さんを見送り、今日もバイトが終了した。
私は、さっきまで弾いていたピアノを片付け始めた。
その時、目の前にエプロン姿の雄大が現れた。
「あのさ」
「うん?」
「なんで、あの曲なの?」
「えっ?」
「いつも、どうしてあの曲弾いてんの?
ド●ュッシーの『月の光』」
私は、びっくりして雄大に聞き返した。
「知ってるの?雄大、クラシックとか聴くの?」
「いや、あの曲だけ知ってる」
「どうして?」
「えっ?」
あっ、まただ。
そう思った。
雄大は、時々こんな風に、私が尋ねたことに答えられない時、困った顔をする。
私は、それ以上踏み込んだらいけないと、直感で感じている。
だから、そう言う時は、いつもそれ以上のことは聞かないようにしている。
