ピアノ演奏のバイトを始め、1ヶ月が経とうとしていた時、突然店長にお願いをされ、昼間のバイトも手伝うことになった。
急にバイトが辞めて、新しい子が入るまでの繋ぎでいいと言われ、時間が許す限り手伝うことにした。
今日は、お昼のバイト初日。
「神岡さん、本当ごめんね。助かる。
えっと、今日のシフトは・・・」
店長がシフトを確認していると
「お疲れ様です」
「おっ、佐武くん!いいところに!」
彼がやってきた。
「今日から、神岡さんにも手伝ってもらうことにしたから。
悪いけど、今日は佐武くんが仕事教えてあげて」
「えっ?俺っすか?」
「時任さんが急に休みになっちゃって、本当だったら、彼女にお願いするつもりだったんだけど。
急に悪いけど、頼むね」
そう言って、店長は私たちを残して去って行った。
「あっ、よろしくお願いします」
「あっ、こちらこそ」
ぎこちない挨拶を交わして、早速仕事を教えてもらうことに。
少し気まずそうな雰囲気を持っている彼に、仕事を教えてもらううちに、彼のさりげない優しさを感じた。
困っている私の姿を見つけると、すぐフォローに入ってくれる。
そして、彼の接客は相手への思いやりをすごく感じる。
「ありがとうございました。お気をつけて。また、お待ちしています」
お会計が済むと、すぐにドアを開け、優しくお客様に声をかけ、最後まで見送る。
そんなちょっとした気遣いが、お客様を笑顔にする。
「あっ、神岡さん?先に休憩どうぞ」
お客さんを見送った彼が、私のところに来てそう言った。
「あっ、はい。ありがとうございます」
伝え終わると、またすぐ自分の仕事に戻る彼。
私は、そんな彼をそっと見つめ、そのまま休憩室へ向かった。
