お店は、忙しい時間帯になり、俺もバタバタ走り回っていた。
晴人のグループもみんな揃ったかも、知る由もなく、俺はただ自分の仕事をしていた。
その時だった。
「あっ、雄大!トイレどっち?」
晴人が個室から出たタイミングで、たまたま会った俺に尋ねた。
俺は、そんな晴人に取り合ってあげられるほど、暇ではなかった。
「トイレ?あっ、あっち」
そう抱えていたトレーで、トイレの方向を指し、急いで仕事に戻った。
「失礼します」
晴人の部屋に、注文のビールを届け終わると、丁度トイレから晴人が戻ってきた。
「雄大!忙しそうだな」
「おう、土曜日は混むからな」
「あっ・・・」
俺から視線を逸らした晴人は、突然手を挙げた。
「麗菜!こっちこっち!」
「あっ、晴人!!」
背中に飛んできたその声に、俺はドキッとした。
この声・・・
俺はその場から動けず、振り向くことができなかった。
「あっ、こいつ俺の大学の友達!」
晴人がそう俺を紹介したその時、俺は彼女を見て、持っていたトレーを思わず落としてしまった。
「りん・・・か・・・?」
ずっと見てみたかった。
成長した凛花の姿を・・・
だけど、それは叶わない夢だった。
でも・・・・・・
でも・・・・・・
「おい、雄大!大丈夫か?」
俺の落としたトレーを心配そうに拾い上げる晴人。
「あっ・・・わりい・・・」
「あっ、麗菜、高校の同級生」
俺の前に現れたその子は、俺を見て、そっと頭を下げた。
「これで、全員集合したな」
「えっ?私が最後?ごめん」
「ほらほら、入った入った!」
そう言って、個室へ入っていた2人。
そこに取り残された俺は、しばらくそこから動くことができなかった。
