ある日、カフェのバイトへ向かった俺。
「お疲れ様です」
「お疲れ、佐武くん!」
厨房からホールへ抜けようとしたその時、同僚の時任さんに止められた。
「佐武くん!もう少し待って」
「えっ?」
「今ね、面接してるの」
「面接?」
「ほら、うちのカフェ、夜のバー始めるって言ってたじゃない?
その時に、生演奏する人募集してたみたいで、今日何人か休憩時間に来て面接してたんだけど、
最後の子が今来てね。もう少しこっちで開店準備して待ってて」
「わかりました」
その時だった。
俺の耳に聞こえてきた曲は、最近聞いたあの曲だった。
「あっ、月の光・・・」
「えっ?佐武くん、知ってるの?ピアノの曲なんて」
時任さんが驚いた顔で俺を見た。
「あっ、いや・・・この曲だけたまたま」
「へえ・・・」
意外というような顔で俺を見ていた。
でも、この曲なんだか懐かしい気持ちになった。
なぜか、中学生の頃を自然と思い出す、そんな優しい音色をしていた。
俺は、弾いている人の顔を少し覗いて見たくなった。
だけど、厨房からは、ピアノに隠れて、弾いている人までは見えなかった。
