晴人と昼飯を食べ終わると、俺たちはその場で別れた。
「じゃあ、俺こっちだから」
「予約頼むな!」
「はいはい、じゃあな」
俺は一人、自分家の方へ向かって歩いた。
その時、楽器屋さんの前を通り過ぎようとした時、自然と足が止まってしまった。
楽器屋さんの中から聞こえてくる音楽に、耳を傾けた。
思わず、ドアを開け、お店の中に入ってしまった。
「いらっしゃいませ」
優しそうなおじさんが迎えてくれた。
「あのう・・・」
「何かお探しですか?」
正直、音楽のことはよくわからない。
なのに、楽器店なんかに入ってしまった俺。
だけど、その場から動くことができなかった。
「あのう・・・お客さん?」
立ち止まった俺を不思議そうに見ていたおじさんに気付き、俺は慌てて尋ねた。
「あっ、すみません。あのう、今流れているこの曲って・・・」
俺は、店のBGMの曲について尋ねた。
「ああ、ド●ュッシーの『月の光』ですね」
「月の光・・・」
「楽譜をお探しですか?それとも誰かのCDとか?」
「あっ、いえ、すみません。何の曲か知りたかっただけです。
失礼します」
俺は慌てて店を後にした。
凛花がよく弾いていた曲。
もう何年も聞いていない。
ふとまた凛花を思い出していた。
