Better half

　自分の名前を書き終えた転校生は、チョークを静かに置くと、手を擦り合わせながら、皆の方へと向きを変え、一、二歩前に。

そして、声を発した。

『なかざとゆきです。よろしくお願いします』

ゆきっ！？

私と一緒だ。

そう思ったと同時に、誰かが、
『由記ちゃんと一緒だね』と言い、

クラスメイト達の視線が、いつの間にか私の方を向いた。

眼鏡の奥で、目尻にシワを寄せた増渕先生も、私を見る。

『本当だ。市村と読み方が一緒だなぁ』

心の奥底じゃ、目立ってみたいけど、そうなれない私が居て、この時

思いがけなく視線が集まった事態に、何故か恥ずかしい気持ちになったのを覚えてる。