その姿は瞬間的に窓ガラス越しの私の前まで飛んできた。


「な…なに??こわっっ」

身を引く私を、ガラス一枚隔てた向こうからじっと見る。

灰色の大きな瞳。

人間のはずはない、のにどう見ても人間っぽい。


「さぁ、来るんだ!」


いきなり低い声が聞こえたかと思うと、


窓越しなのに、ぐいっと腕をつかまれて飛行機の外に引っ張り出された!


-ぅえぇぇぇぇぇぇぇ!?

-なに??なんで???
死んじゃう!死んじゃう!
体が速さについていけない。
まるで人形のように風にもみくちゃにされて飛ばされる。


「目を閉じて!」


無理やり目を伏せられ、ジタバタする私。


「大丈夫。さぁ、息をはいてごらん。」
耳元であの低い声がささやいた。

ぎゅっと私を抱きしめている。


もぅ何が何だかわからない私は、必死に息をはいた。



「うっぷ…。ぷはーー。
あれ?イキ…できる。」

「そぅ、それでいぃ。」


驚いて目を開けた私はさらに驚いた。



-イ…イケメン!!!


イヤイヤイヤ、こんなときに何を考えてるんだろう。


でも、さっきはテンパっててまともに見れてなかった。

よく見たら好みの顔だ。

「そんなにイケメン??」
その人が言った。


-!!?なんでわかるの??
テレパシー??

「うん、そうとも言うね。」

得体の知れないその人は言った。

「あれを見てごらん。」
指さすほうを見てみると、さっきまで私が乗っていた飛行機が豆粒大になっていた。


私たちは、雲の上に浮いている。

いや、彼が浮いていて、私は彼に支えられているだけなんだろう。

雲はずっと遠くまで地平線のように広がっている。


「あの~~…
あなた、何者?」


ちょっと沈黙して、首をかしげる彼。



「……魔法使い」

彼は笑って言った。