「・・・・・はい」

緊張のせいで、余計にワタシの声はオッサン化する。

「おお、おはよう」

「・・・・・おはよう・・」
不本意な会話に、テンションが上がらない。
「やっと電話出たな?」

「・・・だって、ずっと切らないから」

「よしよし、偉い偉い(笑)」

「・・・・・ね?声・・低いでしょ・・・?」

「おお、低いな。けど男みたいな声じゃないぞ。声が低い女の声だな」

「!!!」
〜プッ!何だよ、ソレ!!声の低い女の声って!!(笑)〜

「そんな気にする事ないぞ」

「・・う、うん・・・・」

「よしよし、お前そろそろ学校行く時間だろ?」

振り返り、壁にかかる時計を見上げる。



‐‐‐午前8:15


〜!!!ウソ、やばいっ!遅刻しちゃう!!!〜

「うん!もう行かないと遅刻だぁ!」

「おお、じゃ切るわ。気をつけて行って来いよ」

「うん、じゃね!!!」

ダッシュで制服に着替えて玄関に向かう。



踵(かかと)を踏んだままのスニーカーで、自転車に乗ると全速力で、自転車を漕ぐ漕ぐ漕ぐ!!!









キキキキィーッ!!!


何とかギリギリ・セーフで学校に到着して、自転車置き場に向かう途中、携帯がピカピカ★点滅しているのに気付く・・・

《今日は、お前の声聞けて嬉しかった ありがとうな。勉強頑張れよ》

「・・・・ふふふっ」
そのメールを読んだ時、ワタシは恥ずかしかったけれど、こんな声を聞いて《嬉しかった》なんて言ってくれる彼をワタシは、たまらなく真っ直ぐで素敵だな・・・と思った。



初めて聞いた彼の声は、年上なのに少年みたいに可愛らしい声で、自分の耳が、くすぐったく感じた。
そして、もう・・・コンプレックスだった声を聞かせてしまった後は、とてもワタシの胸の内は晴れ晴れとしていた。