「このままお前をかっさらって、どっかに行けたらいいのにな…」

 

冷たい秋風の吹く海辺で、隣に座っていたハルがふと、そんなことを言った。

私はただその言葉が嬉しくて、彼の肩に首をもたげた。
 

ハルと一緒にいることが私にとっての全てで、ただ唯一の現実だった。