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放課後、桐田君は掃除当番なのにそのまま誰にも気付かれずに帰ってしまった。

「うわぁー初日からあんな無愛想な人って初めて見た~」
「ねー。かんじわるいしさー。掃除当番サボって帰るしさー。まじ
超暗いしキモいし、ないわ~。」
桐田君と同じ掃除当番だった女子のグループがほうきを持って、
円になって話しているのが聞こえた。
グループの真ん中に美波がいるのが見えた。



確かに桐田君は掃除当番をサボったのかもしれないし、
サボったんじゃなくて、知らなかったのかもしれない。
今日誰とも話さなかったのも
緊張してたからかもしれないのに
皆よく悪口言うなぁ...。
とか思ったんだけど、
あたしはチキンだからそんなこと言いに行く勇気とか
まったくなくて。
ましてやただの他人の桐田君のためになんであたしがそんなん言って
かばわなきゃいけないのかがわからないから、
あたしはただ遠目でやつらを見ていた。



だけど、
聞きなれた声が聞こえた時、
あたしは驚いた。


「桐田君、そんなに悪い人じゃないと思うよ...。あのね、さっきね、
私が落としたシャーペンをね、桐田君が何も言わずに拾って、
私に渡してくれたんだよ。だからね、悪い人ではない、と思うんだ。
掃除当番をやらなかったのも、忘れてたのかもしれないし、まだ初日なんだから、
皆で桐田君と友達になれるようにさ、がんばろうよ...!」

美波が言った言葉に
クラスの皆が聞き入って、
お互いに「そうだよね」とうなづきあっているのがわかる。



女子達だって少し言いすぎたことに気付いたように、
うん、とうなづいた。




今日改めて思った。



美波は


すごい。