真奈を殺したあいつの言葉が俺の脳裏をよぎる。
…―現実世界のコバエがうざいんでね。
…―もっとおもしろいものが見れそうだな。
『あいつ…真奈と涼を戦わせる気なんじゃ…』
『…!?』
全員が少し黙り母さんが小さく口を開いた。
『ぁあ…なんで忠誠プログラムのこと忘れてたんだろう…』
香音が頭を抱えてしゃがみこむ。
政府にバグだとバレていながら生きて現実世界に帰れた時点でおかしい事に気づかなくてはならなかったのに、香音も裕も涼も"真奈は現実世界に生きて帰れた"ということにしか目が向いていなかったのだ。
『とりあえず急ごう。涼が本部につくまでに全部終わらしたらいいんだろ!』
『香音さん!!そこから本部までどれぐらいかかる?』
秋斗さんが冷静に落ち着いた声で問いかける。
『こっちの時間で1時間ぐらいかかるわ…』
『1時間か…15日ぐらいだな…急いでいけば間に合うか。』
秋斗さんはダッシュボードを開けて救急箱を取り出すと俺に渡し春斗の傷の手当てをするように指示した。
俺が救急箱を受け取ると秋斗さんはバックミラーを確認し一気にスピードをあげた。
