「……」

紙にはビッチリと、文字が並んでいた。
読み始めてからそれほど経たない時間に、翔は顔をあげ、友也をみた。

「これ…小説だよね?」

「うん、田中さん、小説兼医者だからね」

「手かがりじゃなくない?」

友也はアハッと高い笑い声をあげたあと

「よく読んでみなよ、そしてよく考えてみて」

「……」

―よく考えてって言われてもなー…

意味ありげな友也の言葉に従うように翔はまた紙に視線を落とし、読み始めた。

その間友也は暇だったので、どこかに行ってしまった。が、そんなことも気づかないほど、翔は熟読していた。