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「マザー!今日、旅立っていくのは3人で良かったよね」

施設に戻った希螺は、一直線に施設長-ーマザーがいる部屋へと飛び込んだ。

そんな希螺を、マザーは驚くでもなく優しい笑顔で迎える。

「そうですよ。
キラ、今日もお願いできますか?」

「任せろ!
……でもマザー、お願いなんて言うなよ。これは元々オレが、好きで勝手にやってたことなんだからさ」

希螺はにっこりと人なつこい笑みを浮かべると、マザーの方へ両手を差し出す。
制服からのぞいたのは銀色の腕輪だった。

「この日だけはいいんだよな?」

「ええ。
でもやりすぎないでくださいよ?」

念を押すような希螺の言葉にマザーは笑みを絶やさずに、机の引き出しからカードキーを取り出した。

「分かってる。怖がらせちゃ意味ないしね」

マザーがカードキーで腕輪を外すと、希螺は深々と頭を下げ、今度は静かに部屋を出て行った。

「不思議な子ですね」

それを見送りながら、マザーは希螺が外し机の上におきっぱなしになっている腕輪を拾い上げる。