それは分かってると華音もはっきりと言う。

「でも、イヤなのよ。早くあんなところから出ていきたいと思ってるんだから」

俯いたまま絞り出すように言葉を紡ぐ華音。

「そんな心にもないこと、よく言うね」

華音が顔を上げると、いつの間にか、透の視線は華音の方に向いていた。
口元に笑みを浮かべた透をみて、華音は顔を真っ赤に染めた。

透に言われたことが、図星だからだった。

とっさに反論する言葉を失ってしまう。
それと同時に、透が乗っていた机から降り、掃除を始めてしまったため、なんとなくタイミングを逃してしまった華音は、ただ黙って箒を持つ手を動かし始めた。