「ぐえっ」

つぶされた声が呻いた。

「あれ?白衣?」

壁の下からのぞく白い服をみた希螺が声を上げる。

のぞき込んでみると、30歳前後の男がそこにおり、つぶされながらも希螺の方を見ていた。

「お前が柏木希螺か?」

訊ねかけてくるので、頷いて肯定してみせる。

「OK……とりあえず自己紹介をしたいので、この壁何とかしてくれないか?怪しいもんじゃねぇからよ」

男が笑みを浮かべる。

とりあえず敵意は感じなかったため、男のいうとおり、壁を消す希螺。

やれやれと男が立ち上がる。

すらりと伸びたその背は希螺が見上げるほどの長身だった。

くたびれた白衣が身長にあっておらず、どこか間が抜けてみえる。

深い緑色の瞳が、じっと希螺を見つめていた。

「驚かしちまったみたいだな。俺は栄我、東の上司だ」

ニヤリと笑みを浮かべ、希螺の目線に会わせるようにしゃがみ込んで、男ーー栄我はそう言った。