「これから聞いていけばいいしな」

自分の中でそう結論付け、今に至る。

それにしても、春日がこんな風に無防備に寝るとは思わなかった。

まだそんなに時間を共有したわけではなかったが、初めて会ったときから、春日は他人に対してどこかしら一線引いているように見えたからだった。

年が一緒で、同性だからだろうかななどと思ってみるが、何か違う気がした。

人なつっこく笑うし、いろいろと表情も豊かであったのだが……考えはまとまらない。

はっきりしたものはなかった。

それでも今春日がゆっくり寝ることができているなら、まあいいかと一人で頷く。

その時、部屋の中からでもはっきりとわかるくらいの足音が響く。

「こ~こ~か~?ひ~が~し~?」

ゆっくりと扉が開けられ、同時に地を這うような声が希螺の耳に届く。

それははっきり言って怖かった。

だからほぼ反射的だった。

どずんっ

鈍い音がして、希螺の目の前に厚い壁が出現し、部屋の中に進入してきたそれを押しつぶしていた。