予想と違う華音の返答に、透は思わず間の抜けた声を出す。
華音は、視線を宙に浮かせたまま小さくため息をついた。

「私たちの年になると、よほどのことがない限りそんな話がくること自体が珍しいことだもの。
キラは、送り出される子供たちにプレゼントをしてるらしいの。
私も実際にみたことないからよく知らないんだけど」

「プレゼント!?
……洒落たことするんだなぁ~」

華音の言葉に透は目を丸くする。
華音も箒を持つ手にぎゅっと力を込め俯いてしまう。

「私、すごいとしか思えなかった。
だって、私は旅立ちの日が大嫌いだったもの。自分が送られる立場にならない以上、ここから出ることはないんだといやでも再確認させられる日だったから……」

「カノン……」

「今だってそう。
中学の基礎知識さえ獲得すれば、働くことだってできたのに、奨学生になってしまったばかりに、まだあそこに縛られてるんだもの……」

がっくりと肩を落とす華音。

「そう言うなよ。ここら辺は、高校卒業の証明が有る方が就職しやすいんだからさ」