「そんなに友達も少なさそうな奴が、何をあんなに急いで帰る必要があるんだ？」

風のごとき早さで校門へと走りゆく希螺の背中を見送りながら、透は首をかしげる。
希螺とは、彼が転校してきてからの仲だが、学校の外に親しい友達がいるとは聞いたことがない。

「……今日が、旅立ちの日だから……」

「旅立ちの日？」

ポツリとこぼれた華音の言葉を透は聞き逃さなかった。
何気なく聞き返すと、再び箒を持つ手が止まり、華音は顔を上げた。

「そう。
うちは年齢的にみても小さな子たちが多いから、引き取り手もかなりいるの。
そんな子たちが新しい里親たちに引き取られていく日をうちでは、旅立ちの日って言ってるのよ」

肩にかかった金髪を後ろへとはらいながら、華音が説明する。

「へぇ。
じゃ、あいつも？」

「違うわよ」

「へ？」