矢那と呼ばれた黒髪の女性が、まっすぐと希螺を指さした。
こちらに目をやり、驚くレフィ。

「生存者……って……」

呆然としてつぶやく。
だって、まだ施設の中にはみんなが、マザーがいるはずなのに……

再び施設の方を見て、希螺は愕然とした。

「……あ……」

言葉にならなかった。

すでに、施設は元の姿をほぼ完全に失っていた。
それでも化け物は、何かに夢中になっているらしく、こちらの様子には全く興味を持っていなかった。

誰かが生きているかもしれないという、希望を持つことすら考えつかないほどの絶望が襲ってくる。

「だいじょうぶ?」

矢那が心配そうに希螺の顔をのぞき込み、肩にそっと手を乗せた。

「……なんで」

希螺はうつむいて声を絞り出す。

「何でもっと早く来てくれなかったんだ!
あんたたちがもっと早く来てくれていたら、みんなは、マザーは死ななくて良かったのに!!」