「あいつら、幸せになってくれるかな……?」

屋根の上で胡座をかいたまま、車の消えた方向を見続ける希螺。

青かった空に朱が混じり始め、夜が近づいてくる。

ぼぅっとして眺めていた赤く落ちていく夕陽に不自然な影を見つける。

「……なんだ?
あれ……」

逆光をかばいながら、影を凝視する。影はだんだんと大きくなってきているようだった。
そして、希螺の目にはそれは生物に映った。

「もしかして……
こっちに近づいてきてないか?」

「キラ、冷えてきましたから、中へ入りましょう?」

屋根から身を乗り出した希螺にマザーが声をかける。
しかし、希螺の目は向かってくる影から離れることはなかった。

「キラ?」

マザーが屋根を見上げる。
それに応えようとした希螺の背筋に、例えようのない悪寒が走り抜ける。

直感した。

あれは、ヤバいものだ!