澄み渡った空。

全てを照らす輝く太陽。

頬をなでる爽やかな風。

命芽吹かせる大地。

全ての命を平等に包みこむ深い海。

闇を照らす黄金の月。

かつてこの世界にあったもの。

何もしなくても受けることができていた自然の恩恵。

それが総じて毒となったのは、いつのことだっただろうか。

世界にあるすべての自然から見放された命には寄る辺がなくなった。
とくに人間は自然に適応するだけの力がなく、どんな生物よりも早く死滅への道をたどっていた。

しかし、人間は自分たちの技術のすべてをもって生き延びるための場所を作り出した。

世界の各地に作られた人間の生活に必要なもののみを結集させ、限られた者たちのみが、そこに移り住んだ。

長い年月が過ぎ、そこでの生活が当たり前になった頃、その場所は、いつの間にか人々から『ドーム』と呼ばれるようになっていった。