あれから、どのくらいの時間が経っただろう。


気がつけば、カーテン越しから漏れる光は辺りをうっすらとオレンジ色に染めていた。


昼間には感じられなかった、ヒンヤリとした空気が肌にまとわりついてくる。


それでも、身を縮こませながらドアの前に座って、いつ部屋に押し掛けて来るかもしれない母親の姿を想像して身を引き締めた。


どんなに願ったって、時は立ち止まってくれない。どんな人にも、時間は平等に流れていく。


現在に至るまで、色んな思考を巡らせていたけれど、自ら時間を止めるという結論は、勇気不足という情けない結果で奥底に沈んでいった。


だから私は、もう一つの賭けにすがりつこうと決断しかけていた。


普通の人なら、怪しい世界に飛び込むより、社会に出たほうがマシだと思うだろう。


しかし、生まれてこのかた二十五年。社会経験が皆無で世の中を知らない私には、社会に出るということが、とても、めまいがするぐらい気の遠くなるようなもののように感じられたのだった。


それに、ギスギスしたこの空間からも早く抜け出したかった。


それでも何故、今までここに留まっていたのか。


それは、家の中の息苦しさの何倍もの苦痛が、外の世界にはあったからだ。