「……ちがう。私、たのんでない、だから、帰ってもらって」


やっとの思いで、言葉を紡ぐ。


もちろん、頼んでいないというのは嘘だった。


けれど、今は一刻も早くあの得体の知れない組織から逃れたかったのだ。


わざわざ来てもらって申し訳ないが、ここは波風立てずに帰ってもらうのが一番だと思った。


自分で断わろうとせず、母にすがりつく自分は、なんて情けないのだろう。


ふと、登録完了という、パソコン画面を見た時の事が脳裏によぎった。


そういえば、問い合わせ先の電話番号が書いてあった。


もし、電話をかけていたら、今頃こんな事にはなっていなかっただろうか?


でも、そうやって電話させようとする新手の詐欺かもしれない。


それ以前に、私は電話すらまともに出来なくなっていた。


人と話すのが、怖いのだ。


この生活で、私はどんどん当たり前の事が出来なくなっていった。