ドアを開けられまいと、体を押し付けるようにしてグッと力を入れた。 煩わしい心臓を落ち着かせるように、胸に手を当て息を整える。 「今、あなたを迎えに来たって人が来てるわ。簡単な説明はされたけど……透子が決めた事なのね?」 不安そうに、だけどどこか期待を含んだ母の声。 「……が、う」 ――違う 声が、掠れる。 久々に聞いた自分の声は、あまりにも弱々しくて、別人のようだった。